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泉美木蘭
2017.12.20 08:10

「童貞いじり」を謝罪する必要はない

昨日は動画収録をやって、すぐに次の打ち合わせに行って、
年内ラストの編集会議をみっちりやって帰宅。
夕飯食べたら疲れ果てて夜8時にばったり寝てしまった。
目が覚めて時計を見たら、朝5時だよ。一周まわって健康すぎる。

元電通社員でブロガーのはあちゅうさんが、
社員時代に先輩の大物広告クリエイターから受けた凄まじい
セクハラ・パワハラを告白していた。
相手の岸という男のセミナーに参加した知人によると、
やはり女性へのパワハラ・セクハラの噂はあり、しかし、
業界には彼と仕事したい、お近づきになりたいという人が
うじゃうじゃ群がっていたから、まかり通ったのかも、と。
そんな王様、いやだね。

この騒ぎと一緒に、はあちゅうさんが、ネット上での過去の
「童貞いじり」をネット民たちに糾弾されたとかで、謝罪の文章を
発表していた。「童貞」という言葉で大勢の人を傷つけた、そうだ。

謝罪するほどの童貞いじりってなんなのか?
過去の発言や動画がまとめられていたので見たけど、
サブカル界隈のどこにでも溢れ返っているような
「童貞的マインドの男子」「童貞男子の特徴」についての女子的な
トークでしかなかった。

ことさらに童貞を傷つけたり侮辱したりする発言でもないと思ったし、
知的に分析している部分もあれば、
「童貞として煩悶した経験の長い男性は、優しい人が多く感じる」
みたいな、あたたかい視点もあった。
謝罪するほどの問題があるとは感じないし、単に
「ああ、この人、サブカル女子なんだなあ」
という印象を持ったぐらいだ。
サブカル界隈では男も女もこういう童貞分析してる人、山ほどいると
思うんだけど。使っている単語が「童貞」なだけで、語っているのは
いわゆる「中2病」のことだろう。

「童貞を傷つけた人間に自分の受けたセクハラ被害を訴える資格は
ない」とか
「こんな下品な発言をする女が、セクハラの悲劇を語るな」とか
「童貞という言葉を軽々しく使うな」とか
言ってるネット民が押し寄せて攻撃してるらしいけど、
謝罪する必要なんてなかったのでは?

元電通という高学歴、高キャリアでメディアに露出する女性に対する
嫉妬がもろに出ているし、
そもそも「女のくせに」と足を引っ張る感情もあると思う。
こんなクレームで謝罪させようとする人間は、内心、はあちゅうさん
のセクハラ被害を喜んでいるのではないか?

そもそも「童貞」という言葉を軽々しく使ってはいけないのなら、
貧乳だ微乳だ巨乳だ、女の乳を軽々しく論ずる言葉を発するなよ、
という粛清も成り立つぞ。
一般参賀でなかなか万歳できなかった先生が、周りの空気のなかで、
煩悶する自分の内心を「万歳童貞」って言葉で表現していたけど、
それもNGか?
どこまで潔癖症なんだ。

そしてはあちゅうさんの謝罪文の最後の文章に驚いた。
童貞への謝罪は、自身が公式ブログとして利用している
「LINE BLOG」というサービスには掲載できないのだという。
童貞という単語が、性的表現にあたる可能性があるからだそうだ。
私が書いてるこのブログも投稿できない世界があるということか。

インターネットってこうなるに決まってる場所だが、
この一連の話、どこからどこまで、まったく不愉快。
マナーはもちろん大切なことだとは思うが
「みんなが気持ちよく」利用できるように「ルール化して均一に禁止」
ということに舵が切られると、公共空間が狭まる。
均一に統一された空間と、公共の空間は違う。
あれはだめ、これもだめの不自由では、ルールを守る「おりこうさん」
しかいなくなり、表現の意欲を失う。人間味と活力は喪失される。
まったく面白くない。

こんなに童貞、童貞、連発する日が来ようとは・・・

泉美木蘭

昭和52年、三重県生まれ。近畿大学文芸学部卒業後、起業するもたちまち人生袋小路。紆余曲折あって物書きに。小説『会社ごっこ』(太田出版)『オンナ部』(バジリコ)『エム女の手帖』(幻冬舎)『AiLARA「ナジャ」と「アイララ」の半世紀』(Echell-1)等。創作朗読「もくれん座」主宰『ヤマトタケル物語』『あわてんぼ!』『瓶の中の男』等。『小林よしのりライジング』にて社会時評『泉美木蘭のトンデモ見聞録』、幻冬舎Plusにて『オオカミ少女に気をつけろ!~欲望と世論とフェイクニュース』を連載中。東洋経済オンラインでも定期的に記事を執筆している。
TOKYO MX『モーニングCROSS』コメンテーター。
趣味は合気道とサルサ、ラテンDJ。

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